ようやく掴み取った異性とのダンスの出来るダンスだというのに、イリアの心は少しも弾むことはない。
先程アルロスが言っていた、好きな物を貫き通すという言葉。
その言葉に囚われるように頭の中はそればかりが浮かび上がり、ダンスを叩き込まれた体は勝手に動いていた。
ーー好きな物……今の私にとって一番の好きな物って何なんだろう。
研究に目を向ければもちろん好きで溢れる時間になるのはもちろんだった。自分な知らない世界を体感した時もまた、夢中になれて好きになっていた。
ただ自分の心を動かす一つの大きなものに、心臓が大きく跳ねる。
エスコートされるがまま大きくターンをしたイリアの靡くドレスの裾がシャンデリアの光を浴びて、キラリと瞬いた。
思い浮かべれば浮かべるほど、体は熱くなっていく焦がれていく感覚に陥ってしまう。
ーーこの気持ちは恋愛指南書にも書いてあった、好きの気持ち……なの?
相手のことを思えば思うほど胸が苦しくなると同時に、幸せで満ち溢れていくという文と一致していて、もう認めるしかないのだと決断を下す。
ーー私、ヒューリのことが……。
思い浮かべる彼の姿が目の前に浮かび上がるが、同時にここには彼はいないのだと思い知らされる。
住む世界が違えばいないのは当たり前だと自分に言い聞かせるが持ちを認めてしまった途端、切なさが彼女を襲った。



