研究オタクな令嬢は、ドラゴン【研究対象】に夢中。



頼るべきものは恋愛指南書であると、瞬時に指南書の内容を脳内の引き出しを漁ろうとすればする程、体が熱くなっていく。

仮面の奥底に光るその瞳に映る自分の姿を見てられなくなって、視線を逸らすことしか出来ない。

ーーこういう時は上目遣いで感謝を述べればいいのかしら?でも、そういう空気感でもないし……。

気恥しさもあったが、それよりも彼から感じる圧に飲み込まれないようにしなければと必死だった。

頭の回転を早めようと大きく肩で呼吸していたが、イリアから離れるようにアルロスはフロアへ戻るように足を動かした。

「次に会う時は、その知識を思う存分使ってくれて構わないから」

振り返ることなく吐き捨てた台詞を今度はしっかりと頭に取り込むことは出来たが、やはり上手く頭は回転しようとはしてくれない。

何か言葉を掛けようかとアルロスの名前を呼ぶが、もうそこには彼の姿はなかった。

彼と入れ違うように入ってきた一人の青年がイリアを上から下までじっくりと眺めてくる視線に耐えきれず、イリアもフロアの中へと戻ろうとした。

そんなイリアの腕を青年がしっかりと掴んできた。

「良かったら、俺と一曲踊ってくれませんか」

申し出に断る理由も見当たらず、愛想笑いを浮かべて頭を小さく下げることしか出来ない。

イリアの反応に嬉しそうな表情を浮かべた青年はイリアをフロアの真ん中までエスコートして、曲が始まったと同時に優雅にステップを刻む。