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遠ざかっていくイリアの姿を見つめるヒューリの顔は、彼女の気持ちを吸い取ったかのように切なさが混じる。

ヴァイルが彼の背中を鼻で押すと、体の踏ん張りを効かせていなかったのか顔から地面に倒れ込んだ。

慣れない土の香りを堪能し、空を仰ぐように体勢を仰向けへとゆっくり変える。

満天の星空は見たことも無い美しさが灯っていて、どこを見ていいのか分からなくなった。

「またな……か」

自分の返した言葉にため息をついて星空に向かって手を伸ばす。

ーーこのままイリアがどこか遠くへ行ってしまったら……俺はどうすればいいのだろう。

彼女の生きるこの世界でその姿を探せばいいと考えが浮かぶが、それは迷惑にしかならないと頭を掻きむしった。

聞かされる嫁ぎ先を見つけるための奮闘している日々の話は、彼女の努力している姿を想像出来ると共に、他の男と生涯共にするという断定的な未来を見せつけられているようで、心苦しかった。

素直に応援すればそれで全てが解決するというのに、心はそれを拒絶していくばかり。

この感情のせいでイリアに触れる度に、様々な感情が交差していってしまう。