人前で抱きつくのは不味かったかと目を泳がせて次に取る動作を考えていると、ひょいと持っていた書物がヒューリの手元へと動いた。

古代文字を粗方は読めるヒューリは、眉間にしわを寄せながら切り取られる前の頁の文字を目で追った。

「もしかしたら……俺、この続きを知っているかもしれない」

「えっ?!」

抱き合っていたイリアとナルは、今度はヒューリに食いつくように距離を縮める。

「教えて、ヒューリ!」

「ろくにあたし達の手伝いしてこなかったのに、どうして今更そんな重要なことをサラッと言うのよ!」

「お、落ち着けって!俺自身がその知識があるわけではなくて、この続きが書かれた秘跡を知っているんだ」

秘跡という場所にぴんと来なかったイリアは首を傾げナル達を見るが、同じように理解はしていない様子だった。

「話すよりも実際見てもらった方が早い。案内するから着いてきてくれ」

言うよりも先に体を動かし始めたヒューリに遅れを取らないように、三人は慌てて小屋の外へと出た。

ナルとルガは各々持つ角笛で自分の相棒のドラゴンを呼ぶと、その背中に機敏に乗り込んだ。

ヴァイルに乗ったヒューリがイリアに向かって手を伸ばしその手を取ると、いつものようにヒューリの前へと座り込む。