どうして今ヒューリのことを思い浮かべてしまうのか、よく分からず少女達にバレないように首を傾げた。

ヒューリのことを思い浮かべると心が温かくなって、それでいて元気が出てくる魔法のようなもの。

ふとハンナを見れば顔を赤らめて、そっぽを向いてしまった。どうやらからかい過ぎたようだ。

「ハンナ様」

ハンナの熟した林檎のように赤い頬に触れて、イリアは羨ましそうに彼女に微笑んだ。

「私もいつできるか分からないですけど、恋というものを頑張ってみようと思います。ハンナ様もその恋が実るといいですね」

心からそう願うように言葉を紡ぎ出すと、ハンナは上機嫌な様子で目を細めた。

端から恋愛を経験したことがないからという理由だけで、逃げていては駄目だと言われたような気がして、イリアも目を伏せた。

これから先の未来には何が待ち受けているかは分からないが、きっとナリダムとエリーを安心させ、アゼッタには喜んで貰えるような嫁ぎ先を見つけられるような気がした。

最後の茶菓子が無くなるまでガールズトークは散ることなく続き、気がつけば薄ら寒くなってきた。

どうやら夜に向けて外気が下がってきたようで、ここでお茶会はお開きとなった。

帰り支度を進めるイリアに、ハンナがこっそりと手招きをして呼び込んだ。