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「……ありがとうございました」
「気を付けて帰るんだぞ」
小宮先生から、わたしが知らなかった星原くんの話を聞いた。
わたしは彼のことを相変わらず何も知らないままだったことに気づき、自分の無力さに涙が出た。星原くんにたくさん助けてもらったのに、わたしは彼が辛い時、いつもそばにいることができない。
小宮先生が話している間、わたしは何ひとつ言葉を発することができなかった。
雨は一向に降り続けていて、止む気配は見られなかった。窓から見える景色は一層暗くなっている。
小宮先生に小さく頭を下げ、鞄を持って教室を出ようとドアに手をかける。すると、「…あー、芽吹」と、背中に声がかかった。
「星原によろしくな」
振り返ることはしなかった。キュッと唇を噛み、「…失礼します」とだけ言って、わたしは教室を出た。



