半年ほど前の出来事が幻だったかのように、教室内は穏やかで落ち着いている。




わたしがいじめられていた半年前。


あれから少しして滝口くんは学校をやめて、山岸さんは不登校になった。彼らの顔をちゃんと見たのはもう随分と前のことになる。


もう、顔の特徴すらはっきりと思いだせない。わたしにとって彼らはその程度で、クラスメイトにとってもその程度だったのだと思う。



クラスメイトの一人や二人が減っても当たり前に明日は来るし、人の噂も七十五日というわりに、7日も経てば皆あたらしい環境を受け入れる。

世界は、そういうふうにできているのだ。



実際、夏休みに入る前にクラスは平和になったし、わたしへのいじめもなくなった。そして、わたしに話しかける人も再びいなくなった。