その日、わたしは初めてバイトを休んだ。


居酒屋のバイトを始めてから、放課後に山岸さんたちに絡まれても意地でも切り抜けてバイトに行っていたわたしが、だ。



星原くんと話し混んでいたらあっという間に時間が過ぎていて、バイトの存在ごと忘れてしまっていたのだ。

店長からは電話とメッセージがそれぞれ数十件来ていたけれど、マナーモードにしていたので気づくことができなかった。



慌てて電話をかけなおすと、店長は電話越しでもわかるくらい大きな安堵のため息をついた。事故か何かにあったのではないかと心配してくれていたらしい。


申し訳ない気持ちを抱きながらも、こんなに近くにわたしという存在を大切にしてくれる人はいたのか、となんだかうれしくなった。



結局、「今日はそんなに混んでもないから休みで良いよー」という店長の言葉に甘えてバイトは休みになった。