──まばたきひとつすらしたくないほど、この瞬間を忘れたくなかった。
一瞬もこぼさないように全部、覚えておきたかった。きみのこと、目に焼き付けたかった。
雪に刻まれたふたつの、でこぼこの足跡も。きみの白い息も、かわいい襟足も、濡れたまつ毛も、ぜんぶ。
この瞬間をぜんぶ、きみで満たしておきたかった。
雪が降ったら、思い出すだろう。
世界でいちばん綺麗なこの景色を。
「三橋さん」
「なに?」
「好きだよ」
「……うん、私も大好き」
顔を背けて、きみに見えないように。
私がまた少し泣いたのは、秘密だ。
メニュー