「……あの砂浜、歩いてみたいな」
綺麗に雪の積もった砂浜に、足跡をつけてみたくて。そう言ったら、彼もいいね、って笑った。
誰も踏んでいない雪をさく、さく、と踏む。ふわりふわりと、微かにまだ降っている雪。傘をさすほどではないから、雪がたまに藤沢くんの髪に乗っている。
「……三橋さん」
少しだけ前を歩いていた藤沢くんが、立ち止まる。私もつられるように足を止めて、彼の背中を見つめる。
グレーのマフラー。黒いコート。黒いリュック。ふわふわした髪の、かわいい襟足。
「──俺、引っ越すんだ」
「……え?」
思いがけない言葉に、思わず聞き返す。
藤沢くんは、こっちを振り向かない。
真冬の、雪の日の、海の風が。急に冷たく頬を刺す。



