「ロッテは俺の期待に応えなかった。あまつさえ、俺の前ではユフェの世話をきちんとしているように欺いていた。これが何を意味するか分かるか?」

 詰め寄られたロッテは傍から見ても分かるほど震えている。消え入るような声で「分かりません」と応えると、キーリが代わりに答える。

「皇族に欺しや嘘を吐いた場合は欺瞞罪が適用されます。重い場合は個人のみならず家族も含まれ、財産の没収に加えて爵位の剥奪もあり得ます」
「申し訳ございません! わ、私はっ……」

 涙声で謝罪の言葉を何とか絞り出すがイザークは聞き飽きたとばかりに手を振った。
「言うことは謝罪の言葉だけか?」

 さらに低くなった声音にロッテは息を呑む。怒りの静まらない様子のイザークはこれから処罰するつもりだ。


 シンシアはイザークの腕の中で暴れると、腕の力が緩んだ隙に机の上に飛び乗った。

『ロッテから詳しい話を聞いていないのに勝手に処罰しないでください!』

 シンシアは必死にイザークに訴えた。言葉が通じなくとも、小鳥と気持ちが通じ合ったようにイザークにも気持ちが届くかもしれない。
 それに愛猫重症患者なら自分の猫の気持ちくらい表情を見て擦ることができるはずだ。

 ところがイザークはシンシアの方を見てぽかんと口を開けただけだった。何故かその背後では同じようにキーリも驚いて呆気にとられている。
 シンシアは首を傾げた。