ロッテは痛みで顔を歪ませるが、淡々とした声で答えた。

「……それは違うわ。私はランドゴル家の人間だから、動物を虐めるなんてことは前提としてあり得ない。もしユフェ様に何かあれば私以外の使用人全員が嫌疑をかけられるわよ」

 ロッテは彼女たちが愚行にでないように諭しているようだった。けれど、皮肉めいた笑みが挑発しているようにも見える。

「なんて小賢しいのかしら!!」
 髪を掴んでいた侍女は顔を真っ赤にさせ、手を振り上げた。



『三人が一人にたかるなんて恥ずかしくないの? いい加減にしなよ!!』

 我慢の限界に達したシンシアは茂みから飛び出すとロッテと侍女の間に割って入った。
「シャーッ!!」と牙を剥き出しにして三人を睨めつける。これ以上ロッテが危害を加えられないように威嚇した。

(陰湿な侍女たちに私を傷つける度胸なんてない。そんなことしたら家名にも傷がつくだろうし、私の飼い主はあの雷帝イザーク様だから恐ろしくて喧嘩なんて売れないはず)

 シンシアの思惑通り、侍女たちは怖じけづいて後退る。威嚇してさらに詰め寄ると、顔面蒼白になって蜘蛛の子を散らすように逃げていった。