呪われ聖女、暴君皇帝の愛猫になる 溺愛されるのがお仕事って全力で逃げたいんですが?



 早く、早く厨房へ行かなくては。

 ベッドから降りて先を急ぐ。イザークは部屋の扉を少しだけ開けてくれていたので外には難なく出られそうだった。

 シンシアが扉の隙間に身体を滑り込ませていると、不意にベッドの方からイザークの魘される声が聞こえてきた。その声にぴたりと足を止める。

 声は断続的に続いてとても苦しそうだった。

(イザーク様、どうしたの?)

 シンシアは踵を返してイザークに駆け寄った。


 眉間に皺を寄せ、長い睫毛はしっかりと閉じられてはいるが絶えず震えている。額には珠のような汗が滲んでいた。

 シンシアはイザークの顔の前まで移動すると、自分の前足を彼の頬にぴったりとくっつけた。

『私が側にいますから大丈夫です。夢の世界くらい、楽しい思いをしてください』

 優しく声を掛けると、その言葉に反応してイザークの眉間の皺が和らいだ。暫くすると魘される声も消えて再び規則正しい寝息へと戻っていく。

 シンシアは安堵の息を漏らすとイザークの頬に乗せていた前足を下ろした。
 パンケーキは食べられそうにないが、誰かの役に立てるならこんな日も悪くはないのかもしれない。

 シンシアは彼の身体にぴったりと身体を付けるとゆっくりと瞼を閉じた。