雨はさらに激しさを増して辺りに雷鳴が轟き始める。激しい稲光が曇天で光った次の瞬間、ネズミの魔物に向かって天から(いかずち)が落ちた。

 雨水をたっぷり吸収していた体毛のおかげで感電の威力が増し、魔物はまる焦げとなって倒れた。
 しゅうっという音と獣の焼け焦げる臭いが辺りに立ちこめる。と、魔物の身体が徐々に灰となって消え始めた。


「私、魔物を倒せたの?」
 ぽかんと口を開けていたのも束の間。ふつふつと実感が湧いてくるとシンシアは拳を握りしめて叫んだ。

「やったああ! 魔物を倒したわ!!」
 浮かれたシンシアは思わず結界を解いて勝利を噛みしめる。

 しかしそれが不味かった。本来なら魔物が完全に死んで姿が消えて核だけになるのを待ってから結界を解かなくてはいけない。
 完全に消えないということはまだ少しだけ魔物に魔力が残っている状態を示している。


 ネズミの魔物は最後の力を振り絞って、真っ黒な球を投げてきた。球はシンシアの額に当たると煙のように広がって消えてしまう。

 当たった部分は蛇が這うような気持ちの悪い感覚がする。思わず悲鳴を上げて額に手を当てると、突如シンシアの身体に異変が起きた。