報告を終えたカヴァスが部屋からいなくなると静けさが室内を包み込む。一通りの仕事を終えたイザークは肩に手を置いて首を鳴らしていると、ピュウピュウという寝息がベッドから聞こえてきた。

 椅子から立ち上がりベッドを覗き込むと、ブランケットの上でくるんと丸まって眠るユフェがいる。夢でも見ているのか時折耳がピクピクと動いている。
 イザークは目元を手で覆うと悶絶した。


 嗚呼、可愛い。目に入れても痛くないほどに愛おしい。この寝姿をしかと目に焼き付けておかなければ。

 ひしひしと幸せを噛みしめ、再び愛猫を眺めた。その途端、イザークは瞠目した。
 そこにいるのは愛猫ではなかった。代わりに恐ろしいほど顔の整った少女が身体を丸めて眠っている。長い睫毛で閉ざされて瞳の色は分からないが金色の髪と、何よりも紺色の祭服を着ている。

 間違いなく、自分の探し求める相手だった。


「――シン、シア?」

 震える唇から擦れた声で囁く。
 信じられない。これは幻なのだろうか。そう思ってイザークはそっと頬を撫でてみると柔らかな感触がする。