グレンは天井を見上げながら、ルネリアに顔を向けることなく淡々と話をする。グレンの視線の先には、教会のステンドグラスのような、神々しいほどの極彩色の光景が広がっていた。いつの間にか昇っていた朝日が、赤、緑、青、黄色と彩のついた硝子に通っていき、万華鏡のように姿を変えて煌めいていく。
「きれい……」
ルネリアが思わず声に出す。グレンは彼女を食い入るように見つめた後、咳払いをしてため息を吐いた。
「グレン様……?」
何か粗相をしたのではと不安がるルネリアに、グレンが静かに首を横に振る。そして空を見上げた。
「この景色が好ましいと思ったのなら、好きな時に来ればいい。ここも城の一部だ。門の外へ出なければそれで構わない」
「ありがとうございます」
ルネリアが、反射的に礼を言うとグレンは静かに目を伏せる。
「礼を言うなと言っても、お前は言い続けるんだろうな」
グレンの言葉に、ルネリアの顔が曇った。彼女は、何か親切なこと、嬉しいこと、優しいことをしてもらったらお礼を言うべきだと考えている。しかし、目の前にいるグレンはお礼を言うたびに表情を強張らせてしまう。そんな時、どうすればいいのか。悩んでいると、グレンは空気を変えるように水の流れる小道に沿った棚を示した。
「そこに、鉢植えを置け。その辺りは特に日当たりのいい場所だ」
ルネリアは頷き、持っていた鉢植えを言う通りの場所に置く。すると横から如雨露が差し出された。
「水やりはこれでしろ。使い終わったら、まぁ隣にでも置いておけ。他の草木や花々は湧水で勝手に水を得られるようになっているから余計な気を回さなくていい」
「分かりました。ありがとうございます」
「……ああ」
グレンがばつの悪そうな顔でそっぽを向く。そしてしばらくルネリアが如雨露で薔薇の鉢植えに水をやっているのを眺めていると、思い出したかのように彼女を呼び止めた。



