しかし、そんな風に気を揉んでいるのは私だけかもしれない。
友人の椎名は少し抜けていて、空気の悪さには気づいていないみたいだった。
魚で例えたらブラックバスとか、どこでも生きていけるタイプだなと思う。
真衣はといえば、女王のような振る舞いの河野さんをよく思っていないようだったけれど、
ターゲットにされている鈴木さんについては一言も話さない。
私もどう思ってるかをわざわざ聞いたりはしないから分かりっこない。
聞いたってどうしようもないからね。
真衣はこっくりさんに飽きたのか、十円玉を弾いたり、立てたりしていた。
ここだけを切り取ったら、至極平和な光景である。
鈴木さんが教室にいない時はいつもこんなふうな気の抜けた空気なのだ。
「こっくりさんは降臨したかい?」
私は訊いた。



