私の手を引いて歩く常木さんの足取りはホストクラブへ向かっていたときの数倍軽く
下駄の音すらも喜んでいるなとわかるくらいの喜びようだ。
何がそんなに嬉しいのか分かりかねる。
「常木さん、明日もホストクラブ行くの?」
ふいに訊ねると、常木さんがピタッと足を止め危うくぶつかりそうになった。
「行きます」と常木さんは言った。
しかし顔はさぞかし嬉しそうなのである。真衣がニヤニヤしてるのと同じ類の笑い方。
「なんで笑うの〜!」
「僕に行ってほしくないですか?」
「え?」
「どうなんです?」
常木さんはナチュラルに私の手を口元に寄せる。
もう辺りは真っ暗なので常木さんの表情は見えないけれど、前髪から覗く瞳がしっかり私を捉えているのが分かる。
「ど、ど、どうって。友人に頼まれてるんだったら仕方ないよね」
明後日の方を向いて答える、今すぐに私の手を離してくれ。
さもないと、私の心臓がお陀仏になる。



