ネクタイを緩め、ボタンをひとつずつ人差し指と親指で解いていく常木さんに見惚れていると
「僕が脱ぐのをいつまで見ているんですか?」と笑われた。
いつもの妖しい笑みじゃない、単純に面白がっているやつだった。
「ちっ違う! そんなんじゃないっ!」
私は全力で否定したのに
「見てもいいんですよ」
なんていう常木さん。
今度は私がプリプリ怒って、くるっと背を向け顔を覆い、わあわあと喚いた。
そして後ろで着替えている衣擦れの音にすらドキドキする私は生粋の変態なのでは、と自身が心配になり。
やっぱり着物は涼しいですねえ、と感想を述べる常木さんにうまいこと返事もできずに、ただドキマギしていた。
気を紛らわそうと口笛を吹こうと思ったが、そもそも口笛が吹けないことに気づいた。
ただ空気が出入りするだけである。



