「常木さんにとって、私もお店のお客さんと同じような位置にいると思ったのもそうだけど、それよりも……」
私がぎゅっと膝の上で拳を握ると常木さんは「どうしました?」といつもの穏やかな口調で言う。
「それよりも、私は、常木さんが女の人と……その……仲良く話していると思うと、すごく、とても嫌な気持ちになったの」
顔をあげると目を丸くした常木さんと視線が交わった。
「僕に、ヤキモチを焼いていたんですか?」
「……うむ」
「そうですか……なるほど。
拗ねていた時は軽く自己嫌悪に陥っていましたけれど、ヤキモチを焼かれる側というのは、かなり嬉しいんですね」
常木さんは非常に浮かれた様子で立ち上がった。
ちょっと待っていて下さい、と言うとさっさと部屋を出て行ってしまった。



