………そもそも私は鈴木さんとあまり話をした事がなかった。
クラス全体が鈴木さんを無視するという空気になっていても、私は我関せずを通していた。つまり普通に接していた。
そして、そんな自分にもどかしく思ったり、表立って動けない自分が酷く情けなくも感じる。
ともかく、河野さんとその興に乗っかるクラスメイトは悪質であり陰険てまあった。
足を引っ掛けてこかしたり、鈴木さんの席が一番後ろなのも相まってプリントを渡さなかったり。
地味で幼稚な嫌がらせが目についた。それを見てケラケラ笑っているクラスメイトはまったく別の生きものみたいだ。
そういう荒んだクラスの空気が非常に心地悪かった。
魚がカルキ抜きを怠った水槽で弱ってしまうみたいに、私のクラス中に撒かれた毒がじわじわと体を蝕んでいって、息苦しかった。
自分もいずれすっかり毒されて、鈴木さんを無視したり。
なんの罪悪感もなく、みんながやってるから
と適当な大義名分を立ててひどいことをしてしまうんじゃないだろうか。
そんなふうに荒廃した自分を想像して恐ろしくなった。
そんな風にはなるまい………とひっそり心に決めぎゅっと拳を握る。



