「ああ、さっき常木さんを追いかけてたら、石段で転んじゃって」 常木さんはいつもの癖で、着物の裾に手を入れようとしたが、今はスーツだったので空を切っている。 眉間のしわがまた一個増えた。 「仕方ないですね、制服はまずいのでとりあえず僕のを羽織ってて下さい」 常木さんは私の肩にスーツをかける。 「中に絆創膏くらいはあります。大人しくついてきなさい」 「……は、はい」 荒々しく腕を掴まれ、有無を言わせぬ圧でホストクラブへ連行された。