「行こうよー」
「いーかーなーい」
「行こうって」
「いきませーん」
男の人も全然引かない、私も断固としてここを離れないしで
煌びやかな繁華街にてなんとも滑稽な水掛け論をくり広げていた。
そんな、なんの生産性のないやり取りが続いているところに
「なんでこんなところにいるんですかっ」
と男の人が出てきた。
「久美ちゃん……繁華街なんかにきて何してるんです」
それは紛れもなく常木さんだった。
スーツ姿だったので一瞬分からなかったけれど私を引き寄せ、男の人を追っ払ったのは、何度確認しても常木さんだった。
その常木さんは神社で別れた時と同じような冷たい表情だった。
「その傷……」
視線を私の膝に移す常木さん。
「膝、どうしたんですか?」



