「一人で一周を回り終えた頃、僕は大勢の中で自分だけが一人ぼっちであると言うことに気づき、
恥ずかしながら、寂しさで泣いてしまいました。
……しかし、狐面をかぶっている僕が泣いていることに周りが気づくはずもなく、とうとう三周目に突入しました。
そんな時、前からやってきたフユコさんが僕に声をかけてくれたんです。
『寂しさは涙を流すだけでは流れていってくれないわ』と言いました。
まるで僕の心を見透かしたみたいでした」
「それで、一緒に回ったのね」
「いいえ。フユコさんは屋台の並びにある神社の方を指さして『私はここで待っているから、安心していってらっしゃい』と僕を送り出しました」
常木さんは思い出し笑いをした。
常木少年はぽかんとしていたことだろう。
この流れだと一緒に回ってくれるんじゃないの? とそう思ったに違いない。



