「そうだろうね、私も今日そう思った。
弥白の人間らしいところが残っていて安心したよ」と呵々大笑した。
「桜なんかよっぽど嬉しかったんだろうな、君が風呂に入ってる間ずっとその話だったよ」
遠くから「久美ちゃーん」と私を呼ぶ声が聞こえてきた。
常木さんだ、と私と慎二さんは目を合わせる。
「あれえ、どこだ」とぶつぶついう声が廊下で聞こえ、襖が開いた。
「あ、いた。こんなとこで何してんの。
いくら父さんでも僕の彼女を部屋に連れ込むなんて許せないよ」
と私に抱きつく常木さん。
変な勘違いはよしてください。
「変なことされなかった?」と顔を覗き込まれる。
慎二さんが「アホか」と呆れ「私は桜一筋だ」と断言していた。
なんというか、さすが常木さんのお父さんだ、と妙に納得した。



