「ちょっとちょっと」と手招きされ、キョロキョロする。
「久美さん、ちょっとおいで」とやっぱり私に声をかけてくれたらしい。
慎二さんはニコニコしていた。
あれ、思っていたような人と違うのかも。
眉を下げて笑う顔は常木さんそっくりだ。
「弥白のアルバム見るかい?」
言うや否や書架から分厚いものを取り出して広げる。
「これ、常木さんですか!」
私は興奮した。
小さい頃の常木さんは頼りない顔つきで写真に写っていた。
心もとなげにカメラを見つめ、狐の面を持った少年。
これが昔の常木さんか、当たり前だけど今と雰囲気も顔つきも全然違う。
慎二さんはページをめくっていく。
だんだん大きくなっていく常木さん、中学に入る頃には人当たりの良い笑みを浮かべて笑っている。
誰もが見惚れるような完璧な笑み、でも私はそんな彼の笑顔を見ていると少し不安になる。
どの写真も寸分の狂いもない笑顔だった。



