暗闇からひっそり出てきた人は、狐の面を被っていた。





「昨日ぶりです」



と、右手で額を覆うようにして狐面をとるその人は昨日会ったばかりの常木さんだった。






恐怖で涙がこぼれ落ちる寸前だったが、驚きで今にも目から飛び出しそうだった雫が、ひゅっと一気に引っ込んだ。





「び、びっくりしたあ」





不審者かと肝を冷やしていたので、安心した私はヘナヘナと座り込み、


常木さんは悪戯に微笑んだ。



「キツネさんですよ」


と、なんだかとっても楽しそうである。




「も、もう〜。驚かせないでくださいよ、心臓落っこちちゃうかと思った」



「君はとても優しいです。こんなところで一人で待つことを選ぶなんて」