全てのペアが境内からいなくなった頃になって、私は怖くなってきた。
めっちゃ暗いし、風で気がざわめく音すら獣の呻き声のように聞こえてくる。
全ての物音が畏怖の対象なのだ。
賽銭箱の横に座り込んだ私は、夜の間隙からケモノがぬっと顔をだす想像をして、手前勝手に自分の首を絞めるはめになった。
考えるより先に行動してしまったばかりに、自分一人が薄気味悪い神社に取り残されることなんてこれっぽっちも考えていなかった。
私という子は、実にアホの子なのである。
これが今の私にできる精一杯です、鈴木さん。
心の中でつぶやく。
表立って助けたりをするのは、無理そうだけど……あなたを見ている人がいるということをわかってもらえたらいいなと願う。
膝を抱えて、私はじっとみんなが帰ってくるのを待った。
───そんな時だ、ざわざわと後ろの木が揺れたのは。
誰かいる、と思った。
さっきの想像が、なんと現実に起こってしまったのかと思い、背筋が凍る。
驚いて声をあげそうになった時
「しっ」と後ろから口を塞がれ、私は益々ここに残ったことを後悔した。



