涙を拭いて常木さんの視線から逃げるように問題集に向かう。
シャーペンを持つけれどちっとも捗らない、教科書に雫が落ちて滲む。
私も真衣みたいに、常木さんはイケメンだけどタイプじゃないなあ、と割り切れたらいいのにな。
そしたらうじうじすることもないのに。あるいは、これからはちゃんと気をつけるね、と気前よく返事できれば。
問題は全然解けないけれど私は黙りこくって机に向かっていた。
隣から痛いほどの視線を受けながら。
「ただいまー………って何?」
猛暑の最中くたくたになって帰ってきた真也は私の赤くなった目と常木さんをみて顔を顰めた。
「弥白さん、久美となんかあったんですか?」



