久しぶりにあったフユコさんは僕のことを覚えていた。




驚いたことに僕が幼い日に泣きながら周った夏祭りもしっかり覚えているよ、と。




僕としてはそんな恥ずかしい記憶は忘れてくれても良かったのだけれど、
懐かしんで目を細めるフユコさんを見ているとまあいいかという気になってきた。





フユコさんは僕を部屋に招き入れると、開口一番「何か相談事かな」とニヤリと笑った。




図星だ。




 相談する相手としては、普通に考えてミスチョイスだと思う。
好きな子のおばあちゃんに相談するとかありえない。




でも僕としてはこれはもう結婚の申し込みと同じくらい気持ちでここにやってきた。




僕と久美ちゃんの関係を前に進めるためには、必要な工程。




妖守という厄介な役が、久美ちゃんとの関係の足枷になっているのは確かで。




実のところ、僕がお付き合いできるのは神社関係の家柄に限られる。




「弥白くん」



フユコさんは湯呑みをコトンと置き、ゆっくり僕に目を合わせた。



「私に仲介人になって欲しいのでしょう?」