「絶対、椎名が人差し指に力いれてたけどね。動いてはいたよ」
真衣は10円玉を財布に戻しながら、椎名に目配せした。
「いやいや、してないってそんなズル。降臨してましたよ完全に」
椎名は長い髪を耳にかけながら言った。
その姿はとても大人っぽいのに、ちょけるのが好きな性格で少し残念なところがある。
「あ、やべ」
開け放っていた窓から風が吹き込み、こっくりさんの文字盤が吹き飛ばされた。
ひらひらと舞った紙はペタッと男子生徒の顔に張り付く。
「おい」
その男子生徒は不機嫌に声を出した。
同じクラスで隣の席の真也だ。
いつも仏頂面で生活していて、世の中の人間は全て敵、のようなスタンスで生きているかと思う。
真也は顔に張り付いた紙を取り上げ、しげしげと見た。
「なんだこれ、こっくりさんか。アホらし」



