フラれもの同士(原題:頑固な私が退職する理由)


 青木さんが手伝っていたこともあって、企画自体の質が高い。実に具体的で隙がなく、このまま社内コンペに出せそうな仕上がりだ。
 グラフや画像の色合いもまりこらしいセンスが光っていて、見栄えもいい。
 私に相談を持ちかけるような部分は見当たらない。
 思ったままそう告げると、彼女は首を横に振った。
「出口が弱いんです。フリマで売る以外に、なにか目標にできるようなことはないかなって」
「あー……なるほど」
 ちょちょっと作ってフリマで売るだけなら、講座を最後まで受けなくてもできる。
 ユーザーが「これなら最後まで頑張ろう!」と思えるような仕組みが必要だ。
「なにか案はありませんか?」
「あるにはある、かな」
「本当ですか?」
 まりこは目をカッと開いて迫るように身を乗り出す。いつもはほんわかしているのに、圧が強い。相当力を入れているのだろう。
「実現可能かはわからないけど」
「とにかく聞かせてください!」
 個人経営の雑貨店には、ハンドメイド作家の作品を商品として置いているところがある。
 京都の私の友人に趣味で和雑貨を作っている子がいるのだけれど、四条のとある雑貨店に自分の作品を卸している。彼女の作品は国内外の観光客によく売れているそうで、本業とは別に、毎月の食費をカバーできる程度には実入りがあるらしい。
 ハンドメイドの作品を取り扱いたいと思っている雑貨店は、全国各地にあるはずだ。そういうお店を開拓して、ハンドメイド作家として活躍したい人に紹介できるような場を作れば、サービスの強みとして打ち出せるのではないだろうか。
 そのようなことを話して聞かせると、まりこは目を大きく見開いて感嘆のため息を漏らした。
「なるほど……! それは思いつきませんでした」
「そういう雑貨店が十分に見つかるかは、わからないけどね」
「それでも素晴らしいアイディアですよ。ありがとうございます! 青木さんに言われた通り、愛華さんに相談してよかったぁ」
「大げさだよ」
 解決の糸口を見つけたまりこは、力強い手つきでタブレットに私が話した内容を打ち込む。
 その表情が理沙先輩と重なって、私はつい口に出してしまった。