「SK企画インターネット事業部の青木と申します」
「ああ! あなたが青木さんでしたか」
司の言葉に、青木さんは目を丸くした。
「えっ?」
当然の反応だ。彼らは初対面である。
「彼女から名前を聞いたことがありました。とてもお世話になっていると」
ああ、やっぱり余計なことを……。
私の睨みにはまったく効果がなかったようだ。
司には青木さんのことを愚痴ったことが何度もある。つまり私たちの関係を知っているのだ。
このふたりが顔を合わせる日が来るとわかっていたら、こいつに愚痴ったりはしなかった。
「……そうでしたか。僕の名前を知っているくらいですから、沼田とはずいぶん親しいようですね」
「ええ、親しくさせていただいてますよ。家同士が僕たちをくっつけようとしているので、親の策略に嵌められたようで悔しいんですけど」
こいつ、いちばん余計なことを言いやがった!
青木さんはふたたび目を丸くする。
「ちょっと! 誤解を招く言い方は……」
やめて、と言いたかったのだが、私の言葉は途中からまりこの甲高い声にかき消された。
「きゃーっ! 愛華さん、御園さんと結婚するんですか?」
広瀬も納得したように言う。
「あ、そっか。だから家との約束で退職するんですね」
この場にいるみんなが盛り上がりかけている。祝福ムードに染まる前に、なんとか誤解を解かなければ。
私は焦りに任せて声を張り上げた。
「違うから! 親が勝手に言ってるだけで、私たちは別になにもないから!」
すがるような気持ちで青木さんの顔をうかがうと、バチッと目が合った。
彼は向かって右の口角を上げ、まるで感情のこもっていない冷たい笑顔で告げた。
「やったな。玉の輿じゃん」
彼の声が届いた瞬間、まるでナイフで胸を貫かれたような衝撃と苦痛が走る。
「だから、まだ決まってないって……」
苦しさでうまく言い返せない。
青木さんにだけはわかってもらいたいのに。
「まったく、おまえのお目の高さには恐れ入るよ。いやぁ、さすがだわ」
青木さんにだけは、茶化してほしくなかったのに。



