「あ、ありがとうございます……!」
想定外のお祝いに、森川社長は感激している。このサプライズについては私も知らされていなかった。私のよしみで司が気を利かせたのか、シャトー・ジャルダンがいつもそうしているのかはわからない。
花束がブルー系なのは彼女のドレスを見て合う花を手配したからだろう。さすがはプレイボーイと言うべきか。
彼の本性を知っている私としては、どうしても胡散臭く見えてしまうのだけれど。
「ちょっとちょっと、愛華さん」
右腕をつつかれ視線を向けると、この状況に興奮しているまりこが小声で話しかけてきた。
「あの方、御園さんっておっしゃいましたよね? もしかして、御園グループの……?」
「うん、御曹司」
私が答えると、彼女の目の輝きが増す。
「ひゃーっ! リアル御曹司、しかもイケメン!」
声を抑えてはいるが、興奮は抑えられていない。
「そんな人とお友達だなんて、さすがはお嬢さまですねぇ」
「あはは……」
たしかに、私が鑑美屋の家に生まれていなければ、彼と出会うことはなかっただろう。
しかしながら、御園家と沼田家では格が違う。以前森川社長とも話したが、我が家は分家だし一般家庭に毛が生えた程度の小金持ちだ。かたや御園家は浮世離れした超ド級の大金持ちにあたる。
しかも司は本家の次男。実家を出て東京で学んだ彼はまだ一般の感覚がある方で、長男やご両親は本当に貴族のような人たちだ。
「愛華とは二十年来の幼馴染みでして、家族ぐるみで仲よくさせていただいてるんですよ」
司が私とまりこの間に割り込んできた。小声で話していたつもりだったが、会話が聞こえてしまったようだ。
御園グループの御曹司と知って、抜け目のない山中部長がメガネを光らせやってきた。
「いやいや、本日はどうもお世話になりました。よかったらお名刺頂戴できませんか」
部長を皮切りに「私も」「私も」と名刺交換会が始まった。
その中には青木さんがいる。「余計なことは言うなよ」という気持ちを込め、私は司を睨め付けた。



