フラれもの同士(原題:頑固な私が退職する理由)


 このチームのクライアントは、ここSK企画本社から徒歩圏内にある小さな印刷会社、森川(もりかわ)印刷だ。5年前に先代の経営者から代替わりして、現在は35歳の娘さんが社長を務めている。
 森川印刷のメイン事業は広告印刷だったのだけれど、我が社と同じで、インターネットの普及に伴い紙の広告媒体の需要が低迷していた。
 そこで新社長こと森川明菜(あきな)さんは、就任するなり新事業を開始。自身のネイルアート好きと印刷の技術を組み合わせ、貼るだけで本格的なネイルアートを楽しめるネイルシールを開発し、ネットショップでの販売を行っている。

 このネイルシール、そこそこの売り上げを出してはいるのだが、いまいち世間に普及しないことを、森川社長は悔やんでいる。
 貼るだけで簡単。乾かす時間も不要。
 オフも簡単。サロンよりずっと低価格。
 ネイルを楽しみたいけれど職業の都合や金銭的な都合で難しいという人にも、きっと喜んでもらえる自信の商品だ。
 ネイルシールについてもっと知ってほしい。
 そしてネイルアートを楽しんでほしい。
 そんな思いで私たちSK企画にマーケティングを依頼してくださった。

 現段階で、先方にはすでに「ネイルシールのサブスクリプションサービスを提供する」という提案を採用してもらえている。
 今日のミーティングでは、森川社長にサブスクサービスのPR戦略の方向性を提案できる状態にまで煮詰める。
「――という点と費用対効果を鑑みても、広告を打つのはInstagramやTwitterなどを中心としたSNS、それから一部のネイル雑誌のみで十分かと思われます。具体的に私が考えたのは、女性フォロワーを多く保有しているイラストレーターに、イメージコミックを描いてもらうというもので――」