案の定、ネイリスト探しはうまくいかなかった。
リストのサロンにはお客さんの予定があるから、人員に余裕がないから、と断られてばかり。
わかってはいたけれど、なかなかいい返事がもらえないまま時間が来てしまい、私たちはいったん電話をやめてスタジオへ移動した。
焦りで心の余裕がなくなっていく。
けれどピリピリした雰囲気をカメラマンやモデル、そして森川社長に悟られてはいけない。ネイルシールの楽しさが伝わる写真を撮りたいから、彼女らには穏やかかつ楽しい気持ちで撮影に臨んでほしい。森川社長にも、安心して私たちに仕事を任せてもらいたい。
「急に段取りを変えてしまってすみません。どうぞよろしくお願いします。それではまず、新しい段取りの確認から行いますね」
撮影の指揮は素材全般を監督する私が執ることになっている。
ここに集まってもらったモデル、カメラマン、森川社長にも、ネイリストが来られなくなってしまったことを正直に伝えた。焦る気持ちを抑え必死に笑顔を作り、心配には及ばない、という雰囲気を装って。
「もし代わりのネイリストさんが見つからなかった場合、クローズの写真、大丈夫なんですか?」
モデルからの質問に、私は笑顔のまま大きく頷く。
「大丈夫です。もちろんネイリストさんに施術していただいた方が綺麗な写真が撮れるんですけど、粗は加工技術でどうにでもできますから」
そもそも3step Nailsは、誰でも簡単にサロン並みのネイルアートを楽しめるものなのだ。
プロが施述しなければ様にならないような商品であるわけがない。
そのような話をして皆に納得してもらったところで撮影開始。
まずはHOW TO動画、つまりどのようにネイルシールを自分の爪に貼り付けるかをわかりやすく説明するための動画から。
使用するセットのソファーを調整し、カメラのアングル、ライトの色合いなどをカメラマンと一緒に慎重に選ぶ。
「ライトはこのくらいでよさそうですね。それでは本番、いきましょうか」



