「今朝そのネイリストさんが、私から返信がないことを気にして再度連絡をくださったんです。もしそれがなかったら、私……」
「気づけてすらなかったかもしれないね」
わざわざ気にかけて連絡をくれた親切なネイリストには、今日のうちに私からも感謝とお見舞いの連絡を入れておこう。
それより今は、この問題の解決策を練らなければならない。
スタジオもモデルもカメラマンも、今日の撮影のために準備をしてくれている。撮影が延期になれば関係者全員に迷惑がかかるし、費用も無駄にかかるし、スリステの進行も遅れてしまう。
それは避けたい。絶対に。
「どうした?」
青木さんと広瀬が騒ぎに気づいてこちらにやってきた。泣きそうなまりこが上手に話せないため、私から彼らに説明した。
「……なるほど」
顎に手を当て冷静に聞いている青木さんに対し、広瀬は「えっ? えっ?」と焦って動揺している。それを見てまりこが苦渋の表情を深めた。
チームの空気が重い。気持ちを切り替えなきゃ。ポジティブにならなければいい解決策なんて出てくるわけがない。
なにかを期待して青木さんを見た。すると彼は私の合図をキャッチしたように頷き、笑った。
「曽根、大丈夫だ! 失敗は誰にだってある。俺だって死ぬほど失敗してきた」
青木さんはそう言ってまりこの肩を叩く。
「失敗するとさぁ、罪悪感に押し潰されそうになるよな。息をするのも申し訳ないっつーか。曽根の反省はちゃんと伝わってるよ」
「青木さん……」
彼の言葉を聞いたまりこは感情の壁が崩壊したのか、堰を切ったように涙をボロボロこぼした。
「ここは俺と沼田がなんとかする。大丈夫。俺はちょっとアレだけど、沼田は超優秀だから。知ってるだろ? 曽根は撮影の準備とサポート、しっかりよろしくな」
彼は急に泣きだしたまりこにぎょっとして、捲し立てるように励ます。
「はいっ! よろしくお願いします!」
まりこは涙を流してはいるけれど、目に力を取り戻していた。



