私は父に似てタレ目がちの童顔なので、年相応に見えるよう、メイクは大人びて見えるように施している。
 必然的にやや濃いめだ。ナチュラルメイクだとどうしても子どもっぽく見えてしまう。
 私は今日も赤み強めのリップティントを塗り、上から軽いテクスチャーのリップオイル重ねてメイクを仕上げた。

 入社当初はぶりっ子だったので、子どもっぽく見られる方が都合がよかった。
 しかし社会人として仕事をしているうちに、見た目の幼さやぶりっ子キャラは長い目で見れば不利になることを悟り、2年目までに徐々にキャラ変した。
 服のテイストをふわふわしたものからタイトなものに変え、髪型も首周りをふわふわさせたカールスタイルから毛先だけをカールさせたツヤ重視のスタイルに変えた。
 メイクも眉の角度を上げ、アイシャドウはベージュ系からブラウン系に。アイラインで目元をくっきりと強調させ、まつ毛もしっかり盛るようにした。
 バッグや財布などの持ち物も、パステルカラーのものから落ち着きを感じさせるものにチェンジ。
 今はもうこっちのスタイルが定着しているから、私がぶりっ子だった頃のスタイルを覚えている人は少ないかもしれない。

 不思議なもので、見た目を変えると周囲の人の態度も変わる。
 職場では“新人の女の子”ではなく“仕事仲間”と見られるようになり、様々な面において判断を任せてもらえるようになった。
「おまえさ、仕事できるんだからいい子ぶる必要ないだろ」
 前に青木さんが言ってくれたことは本当だった。私がぶりっ子していたのは、誰かに助けてもらわなければ自分ではなにもできないような気がしていたからなのかもしれない。

 キャラ変してからというもの、以前のようにちやほやされることは、ほぼなくなった。
 そのつもりでキャラ変したのだから、それはいい。
 ただ、ぶりっ子をやめたのに女の敵が減らなかったのは想定外だった。
 私はまあまあ仕事ができるし、それを会社に認めてもらえている。
 それを妬んで嫌みを言ってくる同僚グループは、ぶりっ子時代に嫌みを言ってきた同僚グループと同じだった。
 まぁ、こちらもそういうのには慣れっこだし、仕事以外で仲よくする気もないので、気にしてはいない。
 私の退職まで、お互いにほどよい距離感でよろしくお願いしたいところだ。