無駄な努力はやめたけれど、無駄な意地を張ることはやめられなかった。
 どうしても、自分からは告白しないというのは譲れなかった。
 両想いだとわかっているのなら、そのうち彼の方から言ってきてくれるだろうという期待も捨てきれなかった。
 結局なにも言われずに終わってしまったわけだけれど、それが彼の答えなのだろうから受け入れるのみだ。
 彼は私を恋人にしたいと思うほどは好いてはいなかった。私といる未来を望まなかった。
 私にはそれほどの魅力がなかった。
 それだけの話なのだ。

 有給休暇に入り、私はとても暇になった。
 ダラダラ過ごすことには土日の2日で飽きた。
 せっかくなら平日の昼間をたっぷり楽しむことに決め、以降は都心の繁華街でショッピングを楽しみ、ゆっくりランチコースに舌鼓を打ち、運動不足を解消すべくジムで汗を流す。加えて、しばらくサボっていた美容クリニックで美肌系の施述を受け、ヘアサロンで髪を、ネイルサロンで爪を整え、デスクワークで凝り固まった体を美容整体院で解す。
 私はお金の力を使って、みるみるピカピカになった。
 残念な点は、ピカピカになった自分を誰にも披露する機会がないことだ。
 自分磨きは自己満足のためにやっているけれど、会社に勤めているうちは磨いたことに気づいて「ネイル新しくしましたよね」「今日はいつもより肌綺麗じゃないですか?」と声をかけてくれる同僚が必ずいた。
 その声は少なからず心の栄養になっていたのだなと、今さら自覚した。

 有給消化を始めて一週間が静かに経過。
 会社のタブレットを持って有給に入っているけれど、まだ誰からも連絡は来てない。
 私に連絡が入るということは、わからないことやトラブルが発生したということなので、連絡がないのはいいことではある。
 慎重に抜かりなく引き継ぎをしたのがよかったのだろうが、まったくなにもないのはちょっと寂しい。
 青木さんからも、まったく連絡がない。
 トークアプリの「青木達也」は、どんどん下へ押しやられている。