勇人はあたしを見つめている。


とても切なくて、濡れた瞳で。


あたしも勇人を見つめる。


心臓は早鐘を打っていて、緊張で手のひらに汗が滲んでいる。


勇人の唇が薄く開いた。


その言葉を聞く前に、あたしは言っていた。


「似てるんだよね」


それは、この場の雰囲気を壊す一言だった。


なにかの決意をしていた勇人は一瞬にして現実へ引き戻され、あたしから一歩離れた。


でも、あたしは笑った。


ひきつった笑みで、きっと可愛くもなかったと思う。


「に、似てるって何が?」


ようやっと、という感じて勇人が聞く。


「あたしと松本くんの雰囲気」


そんな言葉が意地悪だとわかっていた。


わかっていわけれど、口から出てきていた。


一瞬勇人の顔が悲しげに陰った。


その瞬間胸がズキリと音を立てる。


勇人のこんな顔は見たくない。


見たくないのに、こんな顔をさせたのはあたしだ。


あたし、なにしてんだろ。


もう1人の自分がいたら、きっと呆れていただろう。