「ルークさま。先日は贈りものをありがとうございました」

「いや。……ふたつめはいる?」

「いえ、まだ残りがありますし……その、申し訳ないのですけれど……あまり、変わらなくて」


そっとヴェールを外したものの、ルークさまは表情をひとつも崩さなかった。理性的なまなざしがこちらを向いているだけである。


「なにも申し訳ないことなんてないよ。こちらこそ浅慮だった」

「いえ! その、もしよろしければ、こういった商品を見かけたらまた教えていただけますか……? 試してみたくて」

「無理にとは言わないよ。私に合わせることもない」

「いえ、そんな。ただ、わたくしも、いつか観劇をご一緒できればと思いますので」


うつくしい空色がまんまるに見開いた。口元が甘く結ばれる。


「ありがとう。見つけたらまた持ってくる」

「こちらこそ、ありがとう存じます」


答えながら、こちらを見るまなざしがあまりにやわらかいのが気になった。

勘違いでなければ、この関係で、およそ自分に向けられることは考えられない種類の甘さだった。


好きなひととか、大事なひととか、以前言われたそういう言葉が、しんしんと降りてくる。


「……ルークさまは、先日の遠征でたいへんなご活躍だったのですよね?」


武勲詩は希望として王国中に広まっている。


いま目の前にいるお方の、新しい武勲詩を写す依頼が絶えない。

こんな辺鄙な場所にまで名声が届いているのだもの、うたわれるめざましいご活躍は、ほんとうのことなのでしょう。


「いや、仲間と環境に恵まれただけだよ」

「でも、おかげさまで、わたくしはいまだこの場所にいられますわ。それに、その……声をかけられることは増えたでしょう?」


普段から黄色い歓声を浴びているに違いないうつくしいひとは、少し困ったように微笑んで返事をしなかった。つまり肯定ね。


「ルークさまは、よいお見合いの話があったら、お考えになりますか」

「アンジー。……それは、うぬぼれてもいい話かな」