あなたに呪いを差し上げましょう

「アンジー、私はなにをしたら、もう一口食べる権利をいただけますか」


野いちごを摘めばいいですか、と聞かれて困ってしまった。


「いえ、もう暗いですし、食べごろのものはすべて摘んでしまいましたし……。お花をいただいたお礼に、というのはいかがですか」

「それでは足りません」

「なにもしていただかなくても差し上げますけれど……」

「とんでもない、これはなにかをしなければいただけない食べものです。薪を割るのはいかがですか」

「暗いですから難しいと思いますわ。そう、ですね。では、いちごバターを入れる瓶の煮沸をお願いしてもよろしいでしょうか。鍋に水と瓶を入れて沸騰させて、しばらくしたら鍋から取り出して乾燥させますの」


割り振る対価をなんとかひねり出し、熱いのでなかなかたいへんなのです、と仕上げとばかりにつけ足すと、ルークさまがいい笑顔で請け負った。


「ええ、それはもうお任せください」

「ありがとう存じます」


よかった、納得してくれた。


やり方を説明しながら鍋に水を張って沸かし、その間にいちごバターの瓶とパンを差し出した。


お好きなくらいどうぞ、と声をかけると、溶けたバターが染みこみきらないくらいたっぷりぬって、実に嬉しそうに頬張った。


こちらでぬらずに渡したのは正解だったらしい。するするとパンとバターが消え、ぐらぐら煮立てたお湯に熱されて、山のように清潔な瓶ができあがった。