「それは、たとえば」

「うん。たとえば」

「ち、父に、相談をして、よいと言われるようなお方でしょうか……」

「公爵殿は、どのようなひとだと、よいと言ってくれるだろうか」


不躾なことを聞くけれど、前のひとたちは、どんなひとたちだったの。


「お相手から、資金の援助と公爵家当主の名の代わりに、売れ残ったわたくしの貰い手になると」

「——それはいけないな。公爵殿は目が曇っておられるのか」


こわい。こわすぎる。そんな地を這うような声を出さないでほしい。


「父は行き遅れの娘を心配してくれただけだと思いますわ……!」

「そうだね。そうだろうね。……でも、それは公爵殿のお考えでしょう。あなたは、どんなひとがいいの」


遮るように言われた。どうにか逃げたと思ったのに、お題は同じものに戻っている。


「い、家柄の釣り合う方ですとか……」

「うん。それから?」


ああ間違った、とか、と言ってしまった。もうひとつはひねり出さなければいけない。わたくしったら焦りすぎなのだわ、自分で自分を苦しめるようなことを。


「おやさしい方ですとか……」

「うん。それから?」


そ、それから? ええと、ええと。


視線がどんどん下がっていく。


問いかけに見せかけた囲い込みが激しい。この方は王宮生まれ王宮育ち、なまなかな交渉ではいけないのを忘れていたわ。


必死に考えて、ぽつりと本音がもれた。


「できれば、お年の近い方ですとか……」


夢見がちなことを、とは言われなかった。


「年が近いといいのは、どうして?」

「いえ、その、別に、お年を召したからどうとか、後妻になるのがいやとかいうことではないのですけれど」

「うん」

「お年が近ければ、少しでも長く、添い遂げることができるかしらと、思いまして……」


せっかく、一緒になるのですもの。