夢の中で佐藤さんが栗色の髪の女の子に誘惑されていた。

 朝方に見た夢のせいで私こと清川ゆかりはいつもよりずっと暗い気分でレジカウンターに立っていた。

 年越しを間近に控え理工書のフロアは普段よりもお客さんの数が多くなっている。比例してお問い合わせ対応などの数も増加するので私たち書店員の仕事も増えていた。

「はぁ」

 隣に並ぶ長野ちゃんが本日三十五回目のため息をつく。まあ正確には開店してから数えた回数なんだけど。

 それにしても長野ちゃんなのに元気がない。

 どうしたのかな?