「やめとけって桜子。今から勉強しても無駄だから」
そんな声とともに左肩がズシッと重くなる。
「…隼太、うるさい」
馴れ馴れしく私の肩に肘を置いてくるこいつは無視して、私は千咲に借りたノートを手に自分の席に向かう。
やっぱりこっちは寒い。
微妙に開いていたドアをぴったりと閉めて、テストまでになるべく公式を詰め込もうとノートを開いた。
「無視って酷くねえ?」
こんなに焦るならちゃんと前もって勉強しとくんだった。ってテストの度思ってはいるんだけど。
「なーなー」
椅子をコツンコツンと蹴られ、その振動でノートに書いていた文字がずれる。
隣に座るその犯人をキッと睨むと、よく見てくれましたとでも言わんばかりにニカッと笑う。



