危機感を覚えたからだ。自分がまだ知らない世界…、熱くて深い沼のようなものに引きずり込まれそうな。まだ火照っている頬がそれを暗示していた。
とにかく今は彼から離れようと、部屋の出口に近づく。
「途中まで送るよ」
「大丈夫です、一人で帰れます」
ドアを開けるとすぐにキッチンがあった。彼は此処に一人で住んでいるのだろうか。見た目は私と同じ高校生に見えるのに。
「でも帰り道分かるの?」
ぐ…確かに。来たときの記憶がない私には此処が一体何処なのかさえ分からない。玄関を開けて辺りを見回しても、全く知らない景色だった。
「大丈夫、君が知ってる道まで出たらすぐに帰るから」
私の反応を見て少し笑った彼は、鍵を閉めると歩き出した。



