顔を上げると彼は、私に向かって手を伸ばして来た。
え、何…?
ゆっくりと近付くその手に、私の身体は強ばった。静かな空間で、永遠かとも思える時間が流れる。
何をされている訳でもないのに心臓が鼓動を速める。確実に雰囲気に呑まれていた。
でも、彼の指先が私の頬に触れようか、という距離でピタリその動きを止めた。
「…っ」
黒い瞳と視線が重なる。その余りの綺麗さに息を呑んだ。
きっと私の顔は真っ赤に染まっていることだろう、鏡を見ずとも分かる。特に少し動けば彼の手が触れてしまいそうな左頬は、熱気を当てられていると勘違いしてしまうくらいに、熱い。



