赤とアビス


しかも私は滅多に寄り道をしないから、母からしたら連絡も無しにこの時間にまだ帰ってこないのは異常事態だろう。


母にメッセージを送ることなんてすっかり忘れていた私は焦る。心配かけちゃっただろうな…。


一先ず、すぐに帰るとだけ送って既読が付いたのを確認した私は、彼に向き合った。


「あの、母が心配しているので帰ります。今日は本当にありがとうございました」


伏し目から視線を上げて、私の目を見た彼に再び呑み込まれそうになる前に、私は深深と頭を下げた。


「そっか。じゃあ…」


心做しか落胆したような声色に聞こえるのは気の所為だろうか。


離れ難いような…もう少し一緒に居たいという思いが湧き出ている自分にも戸惑う。