赤とアビス


助けられた方の私が座っていて、この部屋の主である彼が立っているなんて、すごく居心地が悪い。


ケーキを買ってきたのは彼なのに、立場が逆かのような口振りで気付けば私はそんな風に誘っていた。


「うん」


別段嫌そうでも無い彼の表情にホッと胸を撫で下ろす。


机の傍に座った彼に倣って私もベッドから下りた。ケーキは2個入りのそれで、トレーと蓋を皿替わりにした。


チクタクと時計の音だけが部屋に響く。彼も、私も何を話したら良いのか分からなくて無言が続いた。


最近のコンビニスイーツは進歩していて、これだってすごく美味しい筈なのに変な緊張で味を感じない。


一体私は此処で何をしているんだ…。