底なし沼に引き摺り込まれるような恐怖の感覚と共に、私はハッと飛び起きた。


無意識に両の手のひらを見る。大丈夫、何も変わらない、私の手だ。


頭が鈍く痛むけれど、私は何をしていたんだっけ。


…ここは何処?誰かの、知らない部屋のベッドの上にどうして寝ていたんだろう。


周りには誰もいないけど、扉の向こうから人の声が漏れ聞こえていた。


「あ、起きたんだ」


その扉を開けて部屋に入って来た男の顔を見て、一瞬で記憶がその時に戻る。


「私、あの後倒れて…」


「そう。アンタ寝ちゃったから、それで連れて来た」